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HN:
秋本 勇
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性別:
非公開
職業:
事務・設計
趣味:
ひたすら読書
自己紹介:
はたして事務なのか、はたして設計なのか?!
よく分からない状況の中で働きつつ、したためた小説をここで紹介しています。
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「ねぇ、もうやめようよ…」
泣き出しそうな明菜の横で、静香は笑いながら「大丈夫大丈夫」と言って手に持った懐中電灯をかざした。浮かび上がる無数の細長い長方形の石。果てしなく続きいて行きそうな砂利道。先ほどまではうだるような暑さだったのが、今は妙な冷気でかいた汗も引き始めている。
「どうせ隠れてるのは先生たちだけだもん。それに出口までそんなに距離ないから大丈夫だよ」
二人は林間学校のイベントの一つである肝試しで、宿泊先の施設からほど近い墓地にいた。3クラス合同で行われ、1組の明菜と3組の静香はくじ引きで同じ組になっていた。明菜は怖い話や肝試しが苦手だったが、くじ引きで決まった相手が親友の静香で、彼女がこういった行事が好きであることは少しの救いだった。
「早くお札見つけて出口に行こうね」
怖がって青ざめる明菜を心配したのか、静香は振り返って笑った。
肝試しのルールはよくあるものと同じで、二人一組で墓地を周り、あるポイントにおいてあるお札をとって出口にたどり着ければOKである。墓地が広いので、引き返さずに入り口と反対側にある出口がゴールだ。四角い墓地を半周するように回るようなコースになっている。
「きゃーー!!」
墓石の陰からさもありなんな恰好をした教師が飛び出すたびに、明菜が叫び声をあげ背中に隠れるのを静香は大笑いしていた。
「田中先生だよー」「わっ、こんにゃく!」
さらりとかわされ教師たちは苦笑いだったが、明菜にとってはそれが心強かった。やがてコースの半分ほどに来るころには、静香の快活さに助けられてだいぶ落ち着き始めていた。
「あっ、あれお札だね!」
静香が声を上げたのに明菜もそちらを見ると、小さな石垣のようなものの上にろうそく型の懐中電灯と石で重しがされたお札が置いてあった。
「よかったぁ!」
明菜が駆け寄ってお札を一枚とり、
「よし、じゃあ出口に行こう」
と振り返ると、そこにあったはずの静香の姿がなくなっていた。懐中電灯が道にごろりと転がっている。
「静香?静香!どこいっちゃったの!」
懐中電灯を拾ってあたりを照らしてみると、道のずっと奥に動く影があった。
「静香?」
呼びかけると、その影はぴたりと止まって明菜に向かっておいでおいでをするように手を振った。顔までは見ることができないが、
「静香」
と声をかけると、また明菜に向って手を振る。
「ちょっと、驚かさないでよ…」
しかし、明菜が一歩踏み出すと、その影も一歩遠のく。そしてまた、おいでおいでと手を振る。
「ねぇ、静香…やめてよ。怖いよ」
あわてて駈け出すと、その影も同じように走り出した。恐怖で冷や汗が出るのを構わず、
「待って!」
とその影を追って走る。その影はなんだか楽しそうに、明菜が追いかけてくるのを時々振り返りながら、闇に消えるか消えないかぐらいに距離を保ちながら同じように走った。
そして、どれくらいの距離を走っただろうか。その影がいきなりぴたりと止まって、明菜を振り返った。その影は、やはり笑顔の静香だった。
「ちょっと…早いよ…」
しかし、明菜はその静香を見て汗が引いて行った。それはたしかに静香なのに、なにかが違う。笑っているのに、先ほどまでの心強さがない。なんだか、静香なのに静香ではない何かがそこにいる。そして、またおいでおいでと手を振った。
「静香…」
その時、パッと光がさして明菜は叫び声をあげた。それは、出口で待っていたはずの教師だった。
「明菜!どうした!2時間も帰ってこないからどうしたのかと思ったらこんなところで!!」
「えっ?」
足元を見ると、そこはがけ崩れが起きて立ち入り禁止のテープが貼られている場所だった。さっと血の気が引いていく。
「あの…静香は帰ってますか!」
「静香…?お前、なに言ってるんだ。静香は…」
そのときピリリと教師の携帯電話が鳴った。それをとった教師は沈痛な面持ちで電話を切ると、
「今静香が死んだそうだ。やっぱり駄目だった…」
それで明菜は思い出した。今日の夕食前のこと。
「ねー、違う組の子が海で事故にあったんだって」
「泳いでる時におぼれたんだって」
友達がそう話すのを他人事のように聞いていた。あれが静香だったの…と明菜は冷や汗が吹き出すのを感じた。
「でも、私肝試しが始まってからずっと一緒にいたのに!」
「いや…お前が一人で懐中電灯をもっていなくなったから探してたんだぞ。ここだってくまなく探して。肝試しは最初の一組で中止になったんだ」
じゃあ、あの静香は?
あれ以来、明菜は墓地に近づけなくなった。
静香がまた、自分を迎えに来るような気がして…
泣き出しそうな明菜の横で、静香は笑いながら「大丈夫大丈夫」と言って手に持った懐中電灯をかざした。浮かび上がる無数の細長い長方形の石。果てしなく続きいて行きそうな砂利道。先ほどまではうだるような暑さだったのが、今は妙な冷気でかいた汗も引き始めている。
「どうせ隠れてるのは先生たちだけだもん。それに出口までそんなに距離ないから大丈夫だよ」
二人は林間学校のイベントの一つである肝試しで、宿泊先の施設からほど近い墓地にいた。3クラス合同で行われ、1組の明菜と3組の静香はくじ引きで同じ組になっていた。明菜は怖い話や肝試しが苦手だったが、くじ引きで決まった相手が親友の静香で、彼女がこういった行事が好きであることは少しの救いだった。
「早くお札見つけて出口に行こうね」
怖がって青ざめる明菜を心配したのか、静香は振り返って笑った。
肝試しのルールはよくあるものと同じで、二人一組で墓地を周り、あるポイントにおいてあるお札をとって出口にたどり着ければOKである。墓地が広いので、引き返さずに入り口と反対側にある出口がゴールだ。四角い墓地を半周するように回るようなコースになっている。
「きゃーー!!」
墓石の陰からさもありなんな恰好をした教師が飛び出すたびに、明菜が叫び声をあげ背中に隠れるのを静香は大笑いしていた。
「田中先生だよー」「わっ、こんにゃく!」
さらりとかわされ教師たちは苦笑いだったが、明菜にとってはそれが心強かった。やがてコースの半分ほどに来るころには、静香の快活さに助けられてだいぶ落ち着き始めていた。
「あっ、あれお札だね!」
静香が声を上げたのに明菜もそちらを見ると、小さな石垣のようなものの上にろうそく型の懐中電灯と石で重しがされたお札が置いてあった。
「よかったぁ!」
明菜が駆け寄ってお札を一枚とり、
「よし、じゃあ出口に行こう」
と振り返ると、そこにあったはずの静香の姿がなくなっていた。懐中電灯が道にごろりと転がっている。
「静香?静香!どこいっちゃったの!」
懐中電灯を拾ってあたりを照らしてみると、道のずっと奥に動く影があった。
「静香?」
呼びかけると、その影はぴたりと止まって明菜に向かっておいでおいでをするように手を振った。顔までは見ることができないが、
「静香」
と声をかけると、また明菜に向って手を振る。
「ちょっと、驚かさないでよ…」
しかし、明菜が一歩踏み出すと、その影も一歩遠のく。そしてまた、おいでおいでと手を振る。
「ねぇ、静香…やめてよ。怖いよ」
あわてて駈け出すと、その影も同じように走り出した。恐怖で冷や汗が出るのを構わず、
「待って!」
とその影を追って走る。その影はなんだか楽しそうに、明菜が追いかけてくるのを時々振り返りながら、闇に消えるか消えないかぐらいに距離を保ちながら同じように走った。
そして、どれくらいの距離を走っただろうか。その影がいきなりぴたりと止まって、明菜を振り返った。その影は、やはり笑顔の静香だった。
「ちょっと…早いよ…」
しかし、明菜はその静香を見て汗が引いて行った。それはたしかに静香なのに、なにかが違う。笑っているのに、先ほどまでの心強さがない。なんだか、静香なのに静香ではない何かがそこにいる。そして、またおいでおいでと手を振った。
「静香…」
その時、パッと光がさして明菜は叫び声をあげた。それは、出口で待っていたはずの教師だった。
「明菜!どうした!2時間も帰ってこないからどうしたのかと思ったらこんなところで!!」
「えっ?」
足元を見ると、そこはがけ崩れが起きて立ち入り禁止のテープが貼られている場所だった。さっと血の気が引いていく。
「あの…静香は帰ってますか!」
「静香…?お前、なに言ってるんだ。静香は…」
そのときピリリと教師の携帯電話が鳴った。それをとった教師は沈痛な面持ちで電話を切ると、
「今静香が死んだそうだ。やっぱり駄目だった…」
それで明菜は思い出した。今日の夕食前のこと。
「ねー、違う組の子が海で事故にあったんだって」
「泳いでる時におぼれたんだって」
友達がそう話すのを他人事のように聞いていた。あれが静香だったの…と明菜は冷や汗が吹き出すのを感じた。
「でも、私肝試しが始まってからずっと一緒にいたのに!」
「いや…お前が一人で懐中電灯をもっていなくなったから探してたんだぞ。ここだってくまなく探して。肝試しは最初の一組で中止になったんだ」
じゃあ、あの静香は?
あれ以来、明菜は墓地に近づけなくなった。
静香がまた、自分を迎えに来るような気がして…
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嗚呼、ほらまた聞こえる。闇の囀る小さな音。
何処にいけばいいのか教えてくだサイ。
私と貴方に残された時間は少ない。
始まりは何かの終わりを告げる音。
ほら、ここで終わればどこかで何かが始まる。
それの繰り返し。繰り返し。
静かなゴールは華やかなスタートを演出し、
またさらなる輪廻を繰り返す。
ぷらいまる。
何処にいけばいいのか教えてくだサイ。
私と貴方に残された時間は少ない。
始まりは何かの終わりを告げる音。
ほら、ここで終わればどこかで何かが始まる。
それの繰り返し。繰り返し。
静かなゴールは華やかなスタートを演出し、
またさらなる輪廻を繰り返す。
ぷらいまる。
頭上から降り注ぐ爽やかな日差し。
全身を包み込む青い風と、耳に優しい川のせせらぎ。
足を踏み出せば柔らかな土の感触。
あぁ、こんな美しい世界。
そして、とても儚い世界。
どうしてこんな情景が、失われてしまうのだろう。
いつまでも美しい世界を。
そのための森の吐息。
それはとてもかぐわしい緑の香り。
全身を包み込む青い風と、耳に優しい川のせせらぎ。
足を踏み出せば柔らかな土の感触。
あぁ、こんな美しい世界。
そして、とても儚い世界。
どうしてこんな情景が、失われてしまうのだろう。
いつまでも美しい世界を。
そのための森の吐息。
それはとてもかぐわしい緑の香り。
朝、爽やかな木漏れ日と小鳥のさえずりで目が覚める。
まだ寝ぼけたままの体を起こして、柔らかな日差しに包まれながら、心地よい眠りの余韻を楽しみながら部屋を出る。
「おはよう」
愛しい人の、朝を出迎える一言。
「おはよう」
そのやり取りが、幸せの一瞬なのだとかみ締める。
今日はいったい何が私を待っているのか。
それは楽しいことだろうか、辛いことだろうか。
コーヒーの香りに包まれて、笑顔を交わすこの朝を、
心地よくまた迎えられたことにありがとう。